電田池彦のでんち入門 [2次電池とは]

電田池彦のでんち入門 [2次電池とは]

でんだ
「二次電池」は「一次電池」や「燃料電池」とともに「化学電池」に分類されているというのは前回お話しした通りだが、「二次電池」は「一次電池」以上にたくさんの種類があるんだ。
そして、とりわけ「二次電池」については電気自動車へ搭載されていること等により世界的にその注目度も高まっている。
電池容量や充電サイクルの向上、パワーアップ、小型軽量化等、世界の企業がこぞって開発を進めているんだ!

めぐお
わゎ!またまた突然始まりましたね(汗)
えー、前回の電田池彦のでんち入門 [1次電池とは]に続きまして、今回は第二弾「2次電池」についてニッケル水素大学 電田池彦准教授にお話を伺いたいと思います。
が・・・もう既によくわからない単語も出てきています・・・

でんだ
うむ。ではまず用語の説明からしましょう。

用語の説明

電池容量 =電流(A)×時間(h) で計算する。
電池内部にためられた電流の量を指し、電池の“持ち”を表している。容量が増えるほど満充電状態が空になるまでの時間が増えるが、体積と重量も増える。
消費電力 =電圧(V)×電流(A) で計算する。
1.2vで1Aの電流を必要とした場合、1.2Wとなります。製品の消費電力が大きいと電池の減りも早くなる。
内部抵抗とは 電気が流れにくくなる性質。
自然放電 電池が使われていない状態で自然に放電され電池容量が減っていくこと。自己放電ともいう。
継ぎ足し充電 完全に使い切っていない(まだ使える状態の)電池を充電すること。
メモリー効果 継ぎ足し充電を開始した時の残量を電池が記憶(メモリー)するという意味の現象。
継ぎ足し充電を開始した付近で起電力(電圧)が低下する為、電池の容量が減った(電池寿命が短くなった)ような状態になる。
近年ではリフレッシュ機能付き充電器なども販売されており、メモリー効果を解消することができる。
充電サイクル 放電(使う)と充電を繰り返せる回数。つまり何回充電して繰り返し使えるかという回数。
基本的には電池の容量に対し100%の充放電をしたら1回(1サイクル)という数え方になるが、温度や湿度など外部環境や使用状況によって変化するため、メーカーにより提示された繰り返し使える回数は最適な使用環境下での使用を想定したものとなっている。
終止電圧(放電終止電圧) 電池を使い切った時の電圧。
実際には完全に空になった状態ではなく、あらかじめ設定されたその一歩手前の状態。
過放電 終止電圧まで電池を使い切った状態よりさらに電池を放電させる状態。
過放電を続けると電池性能の著しい低下につながり、充電器によっては充電ができない状態となる。
過充電 電池容量の100%まで充電した後も充電をし続ける状態。
過充電が進むと電池の劣化にとどまらず、発熱や発火の恐れがある。
通常、市販されているほとんどの充電器または充電機能付きの製品には過充電を防止する機能が備わっている。
ショート(短絡) 電位差がある二点間(プラスとマイナスの間)を、抵抗が少ない導体(電線等)で接続した状態。
この状態になると、非常に大きな電流が一気に流れ、発熱や発火の発生につながるため非常に危険。
保護回路 電池を過放電や過充電、ショートから保護するための回路。
生セル 電池そのものを指す。
通常電池は保護回路を搭載した状態で市販されている。しかし近年では、例えば組電池などに加工する前の電池(生セル)が一般にも流通している。

めぐお
あれ?電池容量ってアルカリ電池やマンガン電池などの一次電池には表記していなかったような気がするのですが・・・
一次電池にも容量はありますよね?

でんだ
もちろん、容量というものは一次電池にも存在するが、表示ができないんだ。

めぐお
存在するのに表示ができない??

でんだ
うむ。では先ずは二次電池がなぜ容量を表示できるかを知ろう。
充電池(二次電池)は使っても内部抵抗が少なく、どんな機器で使用しても安定した「電流量」が取り出せるんだ。

めぐお
えーっと、「電流量」というのは「容量」のことでしたね。
つまりどんな機器で使っても、同じ「電流量」が使える・・・?
でも、それって当たり前のコトのようですが?

でんだ
うむ。まぁ、だから、二次電池は容量の表記ができるんだ。
しかし、一次電池は使用時間の経過とともに内部抵抗が増えてしまう性質がある。
“この性質自体”が、製品の電流量によって取り出せる電流量が変わってしまう特性を持っているんだ。
下の例を見てくれたまえ。

【アルカリ単3電池の例】
消費電流20mAのライトを使用した時は140時間使用でき、消費電流100Aの電気シェーバーを使用した時には20時間使用できた。これを容量計算式に当てはめると・・・
100A×20時間=2000mAh
20mA×140時間=2800mAh

めぐお
あっ!同じ電池なのに使用する機器によって容量が違う!

でんだ
これで一次電池には容量の表記がなく、二次電池には容量の表記がある理由がお分かりいただけたと思う。

2次電池の種類

でんだ
それではさっそく主な二次電池の種類とその説明をしてきましょう。

めぐお
全然さっそくではありませんが、お願いします。

鉛蓄電池

種別
特徴 比較的高い電圧を取り出すことができ、電極材料の鉛も安い、短時間で大電流を放電させても、長時間で緩やかな放電を行っても比較的安定した性能を持ち、ほかの二次電池と異なり、放電しきらない状態で再充電を行ってもメモリー効果ない。
充電回数
公称電圧 単セルあたり2V
主な機器 自動車バッテリー、二輪車用、電気自動車、フォークリフト、産業用では、無停電電源装置(UPS等)、病院や公共設備の非常用電源等
使用上の注意 鉛蓄電池は、人体や環境に有害な鉛や硫酸を含んでおり、一般の廃棄物として捨てることが出来無い。他の蓄電池に比べて大型で重く、希硫酸を使うために漏洩や破損時に危険が伴う。

めぐお
車のバッテリーですね!

でんだ
うむ。古くから使われている代表的な二次電池なんだ。
しかし、車以外には産業用がほとんどで一般的に流通しているものはほとんどない。

めぐお
確かに車以外で見たことないですね。
では、もっと一般的に流通している二次電池にはどんな電池がありますか?

でんだ
よろしい。説明しよう。

ニッケルカドミウム蓄電池(Ni-Cd)

種別 円筒型、ガム型、産業用組電池
特徴 ニカド電池、ニッカド電池とも呼ばれる。
内部抵抗が少なく大電流を一度に流す瞬発性に優れており、電池容量がなくなる直前まで安定した電圧・電流を放電することができる。充電式蓄電池の中では非常にタフで過酷な環境下でも使用することができる。また、過放電への耐性も優れている。
メモリー効果の影響を非常に受けやすい為、電池を使い切ってから充電をする必要がある。また、ニッケル水素電池に比べ電池容量が少なく自然放電も大きい。
充電サイクル 300-500回
公称電圧 1.2V
主な機器 コードレス電話、電動歯ブラシ、シェーバー、電動工具
使用上の注意 使い切った状態で保管する必要があり、有害物質のカドミウムを含有しているので破棄時は注意が必要です。

めぐお
ニカド電池なんてあんまり見たことがありませんが・・

でんだ
う、うむ・・・近年はさらにパワーがあるリチウム二次電池や、安定性のあるニッケル水素電池の登場とそれらの電池の性能向上によりニカド電池の市場規模は縮小しているんだ。
ニッケル水素電池やリチウム二次電池の説明の前に、先駆者的なニカド電池の説明が必要だったんだ。

めぐお
ふーん、なるほど。
でも“リチウム”や“ニッケル水素”は聞いたことがあるような気が少しします!

でんだ
突然ですが問題です!
「使い捨てない乾電池」として三洋電機が2005年に発売した電池の名称は?

めぐお
本当に突然ですね!でも わかります!
ズバリ「エネループ」です!
えこじじいの店でも発売開始早々に取り扱いを開始していました!

でんだ
うむ!正解だ!
エネループは「ニッケル水素電池」で、今現在ではenelong(エネロング)やPool(プール)等、様々なブランドのニッケル水素電池が発売されているんだ

ニッケル水素電池(Ni-MH)

種別 単1、単2、単3、単4、単5、単6、角形9V、ガム型、産業用組電池
特徴 エネルギー密度が高く過充電過放電に強い。急速充電も可能。
アルカリ、マンガン、ニカド電池に比べ内部抵抗が低く、モーターやハンディライト等の大電流を必要とする機器に使用した時には高電圧を維持することが可能で、アルカリ電池の数倍の容量を発揮する。
また近年では品質も向上しているため、自然放電やメモリー効果が少なく、充電して繰り返し使える回数が多い、高品質なニッケル水素電池も広く普及している。
充電回数 500~
公称電圧 1.2V
主な機器 多様な機器
使用上の注意 低温や高温になる場所では充電回数や使用容量が著しく低下する場合があります。

めぐお
ニッケル水素電池と聞いてもピンときませんでしたが、エネループとかプールって聞いてわかりました。
そういえば、我が家でもたくさん使っていました!

でんだ
一度使うとやめられないね。

めぐお
そうなんです。アルカリ電池は使い捨てだから廃棄するのも面倒だし、買いに行くのも面倒!
ただ、ニッケル水素電池にもちょっと不満が。。。

でんだ
むむっ!?それは何だい?

めぐお
エネループで卓上扇風機を使っているのですが、アルカリ電池に比べて少しですが風力が弱くて・・・

でんだ
なるほど!
出力電圧が1.2vだからだね。
しかしそれを解決してくれる電池も開発中なんだ。

めぐお
え!すごい!どんな電池ですか?

でんだ
リチウムポリマー電池を使った単三型電池と単四型電池、そして角形電池だ!
公称1.5vだが、おおよそ1.7vから出力するからとても強力なんだ。そして軽い!
先ずはリチウムポリマー電池の特徴を見てみよう。

リチウムポリマー電池(Li-Po)

種別 ゲル状電解質の為様々な形状に変形可能。
特徴 前述の通り電解質がゲル状の為液漏れがなく、さらに外装用機としてアルミラミネート袋を使用する為超小型から大型のものまで多様な形状のバッテリーを作ることができる。
高エネルギー密度と高性能なため、身近なところではスマートフォンなどの薄型バッテリーやドローンのバッテリーなどに用いられている。
充電回数 300回~
公称電圧 3.6V~
主な機器 iPhoneなどのスマートフォン、携帯電話、その他携帯機器、ラジコン、ドローン、降圧式単三電池等
使用上の注意 エネルギー密度が高いため誤った使用をすると重大な事故に至る恐れがあるが、一般的に流通しているおもちゃや電子機器等に内蔵されているリチウムポリマー電池はそれ自体に充放電制御回路や短絡保護、過熱保護回路などが搭載されているため安全性能としては問題はない。しかしバッテリーが膨らんでいる場合などは内部に可燃性ガスが発生している可能性がある為、早めの交換を推奨する。

めぐお
そういえば携帯電話の電池がパンパンに膨れてしまっていることがありますね

でんだ
うむ。電池の劣化や無理な充電などにより、内部に可燃性ガスが充満して膨れ上がってしまっているんだ。
そのまま使用を続けていると充電時に破裂することもあり、場合によっては発火する恐れもあるからすぐに電池の交換をしたほうがいいんだ。

めぐお
怖いですね!気をつけます!
ところで、先ほど1.5v~1.7vのリチウムポリマー単三電池を開発中とおっしゃっていましたが、リチウムポリマー電池の公称電圧は3.6v~ と記載があるのですが?

でんだ
よく気が付いたね!
それこそが降圧式といって、3.6vの電圧を1.5(1.7v)に下げて出力する技術なんだ。

めぐお
そうすると、同じ容量でも電圧を下げて使うことでより大きな容量として使用することができる?と言う事ですか?

でんだ
素晴らしい!だんだん飲み込みが早くなってきているね!
その通りで、例えば3.7v500mAhのリチウムポリマー電池を1.5vで使った場合・・・
3.7×500mAh÷1.5v=1726mAh
小さな電池で1726mAhもの容量を実現できるんだ

めぐお
なるほど!だから出力も強くて軽いんですね!

でんだ
うむ。リチウムポリマー単三電池はPoolブランドで2018年中に発売予定だ!

リチウムイオン電池(Li-ion)

種別 円筒型(14500、17500、18500、18650等)、角形、ピン型、小型蓄電池、産業用蓄電池
特徴 エネルギー密度が高い、メモリー効果がない、自然放電が少ない、充電/放電効率が高い、寿命が長い、高速充電が可能、大電流放電が可能、使用温度範囲が広い、汎用性が高い、性能的な欠点が少なくバランスが良い等の理由で携帯電話などの小型機器や懐中電灯などに使用する筒形電池から自動車などに至るまで幅広い分野で使われている。
充電回数 500回~
公称電圧 3.6V~
主な機器 釣り用電気浮き、懐中電灯、モバイルバッテリー、スマートフォン、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車
使用上の注意 一般的に流通しているリチウムイオン電池は携帯電話やスマートフォン用のバッテリーのほかに、懐中電灯などで使う円筒型電池があります。円筒型電池では特に正極材に使用される材料によって品質が違い、安価なものは不安定で危険なものが多いので注意が必要です。特に17500や18650等にみられるICRなどは不安定で衝撃やショートに弱いため保護回路のないリチウムバッテリーのご使用は推奨できません。

めぐお
使用上の注意にちょっと怖い説明があります・・・

でんだ
怖いけど怖がって使うことが重要なんだ。
製品の性質を知り正しく使うことにつながるからね。

めぐお
でも、正極材とか言われても何を基準に買えばいいのかわからないのですが

でんだ
円筒型リチウム電池における正極材による性質の違いについては、話すととても長くなる。
だから、また次回以降に特集を組んで説明することをお約束しよう!

めぐお
ありがとうございます!
次回は私抜きでお願いします!

でんだ
えぇっ!?

2次電池のまとめ


・二次電池の種類によって充電器を使い分けないとダメだぞ。
・製品の能力に合わせて電池を使い分けよう!
・電池の種類によっては使い方を誤るととても危険ということを知ろう!
・使用後はショート防止対策をしてから適切にリサイクル処理しよう。